「自分の年収は日本全体ではどれくらいの位置なんだろう」と気になる方も多いと思います。
年収を比較したい場合には、中央値と呼ばれる数値をチェックするのがおすすめです。
中央値はよく平均値と混同されますが、これらには明確な違いがあります。
そこで今回は、年収の中央値や平均値について詳しく解説していきます。
日本の年収の平均額と中央値の違い
中央値とは、数値データを大きさ順に並べたときにその中央に位置する値のことです。
日本人の年収を比較する場合にはまず、多くの人の年収データを大きい順または小さい順に並べていきます。
このとき、ちょうど真ん中にくる年収が、日本の年収の中央値ということになります。
中央値を把握するにあたってまずは、年収の平均値をチェックしてみましょう
厚生労働省が発表した「令和5年分民間給与実態統計調査結果」によると、2023年の平均給与(1年通して働いた方が対象)は、460万円(男性569万円・女性316万円)となっています。
年 | 平均給与(年間) | 平均賞与(年間) |
---|---|---|
2023年 | 460万円 | 71万円 |
2022年 | 458万円 | 72万円 |
2021年 | 446万円 | 69万円 |
2020年 | 435万円 | 66万円 |
2019年 | 438万円 | 71万円 |
一方、厚生労働省「2023(令和5)年国民生活基礎調査の概況」では、2022年の世帯当たりの平均所得金額が524万2,000円なのに対し、世帯あたりの中央値は405万円となっています。
年 | 世帯あたりの平均所得 | 平均所得の中央値 |
---|---|---|
2022年 | 524.2万円 | 405万円 |
2021年 | 545.7万円 | 423万円 |
2020年 | 564.3万円 | 440万円 |
2019年 | 調査実施なし | 調査実施なし |
2018年 | 552.3万円 | 437万円 |
年収の中央値をチェックする際のポイント
年収を比較する際に、数値全体の真ん中を表す中央値を確認すると、よりリアルな数値に迫れます。
ここからは、年収の中央値をチェックする際に知っておきたいポイントを解説していきます。
年収の中央値と平均値は異なる
年収の中央値とよく似た考え方に平均値というものがあります。しかし、中央値と平均値は全く異なるものなので、混同しないよう注意しましょう。
平均値は、データのすべての数字を足してから、足した回数で割ることで求められます。
すべての数値を足して求める平均値には、データの全体的な傾向を把握できるという良さがあります。
一方で、データの中に極端な数値がある場合には大きな影響を受けるかもしれません。
例えば5名のサラリーマンの年収がそれぞれ以下の金額だったと仮定します。
A | B | C | D | E |
---|---|---|---|---|
300 | 400 | 500 | 350 | 380 |
結果A~Eの5人の平均年収は、386万円になります。
ですがここでもし、年収が1000万円のFを平均計算の頭数に入れるとなると、(300+400+500+350+380+1000)/6=488.33…となり、平均年収448万円になってしまいます。
データの中に飛び抜けて大きい数字がある場合、平均値は一気に跳ね上がってしまい、非現実的な数値が出てしまうことがあります。
日本人全体の平均年収は441万円ですが、この平均には高所得者の年収が含まれているため、実際の数字からかけ離れている可能性が高いでしょう。
平均だけを比較すると、「自分は平均よりも低いのでは」と錯覚を起こしてしまうかもしれません。
中央値のデータから分かること
中央値は平均値とは異なり、さまざまな数値のちょうど真ん中にくる数字です。そのため、中央値を把握すれば世間一般のちょうど真ん中を把握しやすくなります。
例えば、6名のサラリーマンの年収が以下の金額だったと仮定しましょう。
A | B | C | D | E | F |
---|---|---|---|---|---|
300 | 400 | 500 | 350 | 380 | 1000 |
このデータを数の小さい順番から並べ替えていくと、A,D,E,B,C,F の順番に変わります。
真ん中に来る数字はEとBですので、2つを足して割った数が中央値=390万円になります。
平均値と同じ数値を使用しているものの、1000万円という大きい数値に引っ張られることなく現実的な数字で収まっています。
データの中に高所得者の年収がある場合、平均値を計算すると大きな影響が出てしまいます。
しかし、中央値をチェックすればこういった外れ値に情報が左右されることがなくなるのです。
格差社会と称される現代において、個々の年収額には大きな差が生まれています。
こういった時代には、平均値ではなくあえて中央値を参照し、正確な真ん中を把握するのが有効でしょう。
家族構成別の日本の平均年収
家族構成によって、年収の中央値や平均値は異なります。
ここからは「家計調査年報(家計収支編)2023年(令和5年)」における、家族構成別の平均値をみていきましょう。
2人家族の平均年収
夫婦が共働きをしている家庭の夫婦共働きの家庭における1ヵ月あたりの平均実収入は69万2685円となっています。年収に換算した場合、831万2220円という金額になります。
なお、夫婦片働きの家庭の平均実収入は、52万9445円となります。年収に換算した場合には、635万3340円となります。
3人家族の平均年収
子どもが1人いる3人家族の場合、1ヵ月あたりの実収入平均は71万3558円です。年収に換算すると平均値は856万2696円です。
なお、片働きの場合には年収平均が657万9996円となります。
4人家族の平均年収
子どもが2人いる4人家族の場合、1ヶ月あたりの実収入平均は69万9267円となります。世帯年収に換算すると平均値は839万1204円です。
なお、片働きの場合の世帯年収平均は694万512円となります。
母子家庭、父子家庭の平均年収
母子家庭の平均世帯年収は373万円となっています。また、父子家庭の年収平均額は606万円です。
2人世帯や3人世帯といった家庭と比較すると、やはり年収額はかなり下がってしまいます。
勤務形態別の平均年収・年収中央値
勤務形態によっても年収中央値や平均値は変わってきます。
働き方は大きく、正社員として勤務する「正規雇用」と、アルバイトやパートなど時給や日給で働く「非正規雇用」の2つに分けられます。
「令和4年分 民間給与実態統計調査」をもとにした、正規雇用と非正規雇用の年収中央値や平均値は以下の通りです。
正規雇用の平均年収・年収中央値
正規雇用の年収中央値は449万円となっています。
また、正規雇用の平均年収は523万円です。
非正規雇用の平均年収・年収中央値
非正規雇用の場合、年収の中央値は172万円とかなり下がってしまいます。
また、非正規雇用の平均年収は201万円という低めの数字になっています。
男女別の年収の中央値
年収の中央値は、性別や年齢などさまざまな要因によって変わってきます。
続いては、「令和4年分 民間給与実態統計調査」をもとに、以下のような切り口から年収の中央値をチェックしていきましょう。
男女別・年齢別にみる年収の中央値
男性の年収中央値は484万円となっています。これに対し、女性の年収中央値は270万円でした。
男性の年収中央値 | 484万円 |
---|---|
女性の年収中央値 | 270万円 |
なお、年収平均値は男性が563万円、女性が314万円となっています。
女性の年収中央値は男性に比べて低い傾向にあります。特に、男性が管理職に選ばれ始める30代以降には年収が伸び悩んでしまいます。
30代以降の女性は結婚や出産などで職場を離れてしまうこともありますし、育児が落ち着いたとしても職場復帰せずに非正規雇用で働くこともあります。
女性の雇用機会均等が叫ばれていますが、年収の中央値を見てみるとやはり依然として差があることが分かります。
年齢別にみる年収の中央値
年収中央値を年代別で比較した場合には、やはり年齢が上がるほど金額も高くなります。
20~24歳の年収中央値は234万円ですが、25~29歳になると300万円を超えます。
さらに、40代の年収中央値は400万円以上になります。
しかし、60代以降になると年収中央値はゆるやかに下がっていきます。
20~24歳 | 234万円 |
---|---|
25~29歳 | 335万円 |
30~34歳 | 366万円 |
35~39歳 | 397万円 |
40~44歳 | 422万円 |
45~49歳 | 448万円 |
50~54歳 | 462万円 |
55~59歳 | 470万円 |
60~64歳 | 379万円 |
65~69歳 | 294万円 |
地域別にみる年収の中央値
都道府県別に年収の中央値を見た場合、最も高くなるのはやはり東京都で、その額は449万円でした。また、大阪府も403万円となっています。
一方、最も低いのは青森県で、317万円となっています。
業種別にみる年収の中央値
職種や業種別に中央値をチェックするのも有効な方法です。
業種別に見た場合、電気・ガス・熱供給・水道業の年収中央値は516万円とかなり高めです。
また、情報通信業は439万円、建設業は398万円、不動産業は368万円となっています。
宿泊業や飲食サービス業の中央値は216万円と、ほかの業種よりもやや低めとなっています。
自分の年収をアップさせるポイント
ここまで、さまざまな切り口から年収の中央値や平均値を比較してきました。
中には、年収の中央値と自身の年収を比較したときに、中央値よりも低いと感じた方もいるかもしれません。
ここからは、年収をアップさせるポイントを5つ紹介していきます。
ポイント1】資格を取得する
年収アップの有効策の1つが資格の取得です。
資格取得を通してスキルアップすれば、任される仕事の幅が広がり報酬がアップしやすくなります。
企業によっては、仕事に役立つ資格を取得することで資格手当やインセンティブが支給されることもあります。
汎用性の高いスキルを身につけたり、評価されやすい資格を取得したりと工夫してみましょう。
ポイント2】昇進や昇給を目指す
今の会社で昇進をすれば、それに伴って年収もアップするでしょう。
特に、業績が安定している企業では、年功序列で年収が上がりやすい傾向にあります。
管理職や役職に就くことで年収がアップするケースも多いため、積極的に昇進を目指したいものです。
ただし、能力主義や成果主義の評価制度を導入している企業の場合、成果を出さなければ昇進が見込めない点には注意しましょう。
ポイント3】給与アップの交渉をする
給与の額は企業が決めるものというイメージを持つ方は少なくないでしょう。しかし、社員が企業に対して給与交渉をもちかけるケースは増えつつあります。
ただし、社内評価があまり高くない方がやみくもに給与交渉をしても、うまくいく可能性は低いでしょう。
十分な評価を受けている方や、年収以上の成果を出している方であれば、交渉の余地は十分にあります。
また、他社から転職のオファーをもらっている場合には、これを交渉材料にするのもいい方法です。
ポイント4】副業や投資を検討する
かつては多くの企業で副業が禁止されていましたが、最近では副業を解禁する企業が増加しています。
副業禁止の規定がないのなら、スキマ時間を使って副業を始めてみるのもいいかもしれません。
ただし、本業が忙しい方が無理に副業を始めようとすると、本業と副業の両方がうまくいかなくなる可能性があります。
また、ポータブルスキルがない場合には、副業をしても十分な収入につなげられないかもしれません。
副業に割く時間を確保できる方や稼げるスキルを持っている方はぜひ副業をスタートさせてみましょう。
また、投資で不労所得を得るのも年収アップの有効策です。
投資に回せる資金が十分にあるのなら、投資を検討してみるのもおすすめです。
ポイント5】キャリアアップを目指して転職する
「今の会社で年収アップが見込めない」「頑張りが評価されていない」と感じる場合には、転職を視野に入れてみましょう。
評価されない環境で働き続けても、年収が上がる可能性はそれほど高くありません。
転職にあたっては、自身の能力、キャリアや資格などをしっかりとアピールすることが関心です。
自身の強みを把握して適切に売り込めば、転職の交渉がうまくいく可能性が飛躍的に高まります。
年収の「中間」を知りたいなら中央値を確認しよう
自身と世間一般を比較するときには「平均」を基準にして考えがちです。
しかし、年収の金額は個々で異なるため、大きな誤差が生じてしまうこともあります。
年収の比較をしたいときには、ぜひ中央値を確認してみてください。
中央値をチェックしてみて「自分の年収は低いのでは?」と感じられる場合には、転職も視野に入れてみましょう。